Mr.エイプリル's profileウルトラ登場人物イラスト集PhotosBlogListsMore Tools Help

Blog


    January 03

    お正月特別企画!!!

                             短編小説 『ウルトラマンネクサス』 ―絆― 千樹憐&野々宮瑞生編
     
     ダークザギとの最終決戦から、一年が経った。
     あの戦い以降、対スペースビースト要撃チーム「ナイトレイダー」の活躍もあり、異星獣「スペースビースト」による襲撃は、皆無とは言えないまでも、終息に向かっていた。
     そんなある日の昼下がり、MP(メモリーポリス)の野々宮瑞生は、都内某所のある喫茶店で待ち合わせていた。パリのカフェの雰囲気を漂わせる、お洒落な作りの店だった。
     相手はもちろん、千樹憐である。
     瑞生は、イズマエルとの最終決戦の後、意識の朦朧とした憐に付き添って行った。
     その後、彼が回復するまで、彼女は毎日のように病院へ通った。
     そして、半年前、憐はようやく退院した。
     瑞生は、すぐにでも、憐と一緒に暮らす積りでいた。しかし、憐はまだやりたい事があると言って、アメリカに戻ったのである。
     だから、今日は二人にとって、数ヶ月ぶりの再会となる。
     憐は、プロメテウス・プロジェクトと呼ばれる、TLT(地球開放機構)北米本部の極秘プロジェクトによって生み出されたいわゆる「プロメテの子」である。
     プロメテウス・プロジェクトは、来訪者と呼ばれる地球外知的生命体によってもたらされたオーバーテクノロジーの一つである「ハイパージェネティック理論」に基づく遺伝子操作によって、優れた能力を持った人間を生み出す計画だった。
     ナイトレイダーのCICで、予知能力を持っている吉良沢優もその一人である。
     もちろん、憐も素晴らしい才能に恵まれ、優れた海洋学者として将来を嘱望されていたひとりであった。しかし、不幸なことに、彼は遺伝子上の致命的なディフェクト(欠陥)によって、ある年齢に達すると、細胞のアポトーシス(細胞の計画的自滅)により早期に死に至ることが判明したのだ。
     それにより、計画は中断。
     プロジェクトは、憐を救うための特効薬「ラファエル」の開発に着手するが、それもビースト襲来に対する備えの方が重要視されたため、水原沙羅女史により中断を言い渡される。
     その後、自分の運命を知った憐は研究施設を脱走。
     日本にやって来て、一人の普通の青年として残りの人生を生きることを決意した。
     しかし、彼はどういう因果か、真木舜一、姫矢准に次ぐ第三の適能者(デュナミスト)として、ビーストとの戦いに臨む事となる。
     瑞生が彼と出会ったのはその時である。
     しかし、その出会いは決して明るいものではなかった。
     当時、瑞生はビースト事件の関係者の記憶を消去(イレイズ)する役目にあった。
     彼女は、そんなある日、上司に当たるTLT-J管理官・松永要一郎の命令で、憐の監視任務に就く事となった。
     しかし、不慣れな彼女はすぐに感づかれてしまう。
     今思えば、上は最初から全てを見越して彼女を指名したのだろうが、当時はそんな事は考え付きもしなかった。
     瑞生はあくまで「友人」として彼に近づき、監視するよう言い渡された。
     最初は瑞生もそのつもりでいた。
     しかし、不思議なもので、次第に彼女は彼に惹かれていってしまった。
     上がそこまで見越していたかどうかは分からないが、いつの間にかそうなってしまっていた。
     彼に近づけば、近づくほど、瑞生の中で任務という感覚は次第に薄れていった。
     そしてそのうち、組織よりも彼の事を想うようになった。
     やがて、瑞生は正体を明かした。目的も明かした。
     だが、それでも憐は瑞生を拒まなかった。
     今思えば、或いは、彼は最初から全て見抜いていたのかも知れない。その上で、瑞生を受け入れたのかも知れない。
     いずれにせよ、憐は文字通り瑞生の全てを受け止めてくれたのだ。
     それが、瑞生には何よりも嬉しかったし、また瑞生も彼の全てを知りたいと思うようになった。
     瑞生が、注文したコーヒーをちびちび飲んでいると、やがて憐がやって来た。
    「ごめん、瑞生。飛行機が遅れちゃってさ…」
     10分遅れ。
    「もう、おっそーい」
     瑞生はわざと頬を膨らして見せた。
     すると、憐は本当に申し訳なさそうな顔をして、
    「ごめん。ケーキおごるから…」
     と、手を合わせる。
     こんな時の彼は最高に愛らしかった。
    「ほんと?」
    「うん」
    「反省してる?」
    「もちろん」
    「じゃ、許したげる」
     そこで初めて瑞生は微笑んで見せた。
     すると、ようやく安心した顔になって、憐は向かいの席に座った。
     憐はケーキとコーヒーを注文した。
     あれから一年が経ったんだ。
     瑞生は彼の顔を見て、改めて思う。
     一年前、憐は、事実上最後のビースト「イズマエル」と戦った。
     しかし、あの時は、恐れていたアポトーシスが始まり、文字通り満身創痍の状態であった。
     そのせいもあって、憐は自暴自棄になってもいた。
     彼は、瑞生のメモレイサー(記憶処理装置)で、彼女から自分の記憶を消去してしまおうとした。
     それは、瑞生を傷つけたくないという、彼なりの優しさだったのかも知れない。
     あの時、彼女は無性に腹が立った。
     瑞生は、たとえそれがどんな形で終わりを迎えようとも、憐とすごした時間、それはかけがえの無い大切なものだと信じていたからだ。
    「私に全て忘れろって言うの?ふざけないでよ!」
     こんな事を言ったのが、まるで昨日のことのようだ。
     彼は覚えているんだろうか?
    「ねえ、憐。向こうでは何をやってるの?」
     ふと、瑞生は訊いた。
    「向こうの大学で、研究の続きをやってるんだ。俺がこっちに来る前にやってたのの続きだよ」
    「研究って海洋学の?」
    「そうだよ」
    「まだかかるの?」
    「うん。あと一年半くらいかかるかな…」
    「呼び出しちゃって迷惑だった?」
     不安そうに瑞生は訊いた。
     しかし、憐は手を振って、
    「いや、全然。研究たって、24時間365日ずっと研究室に篭ってなきゃいけないって種類のもんじゃないし、時々何もする事がないって日もあるんだ。今日はちょうどその日でね」
     と、言った。
    「大学にはどうやって?」
    「海本先生たちが話を付けてくれたんだ」
    「海本さんって、確か北米本部査察官の助手よね?」
    「うん。そして、俺の親代わりにして命の恩人」
     プロメテの子は、先に述べたように、人工的に作られた人間である。ゆえに、親も居ない。
     そんな彼らにとって、唯一親代わりと呼べるのが、TLT北米本部査察官助手の海本隼人である。
     彼は、クラスAの超能力者としても知られ、来訪者と人類の通訳を務めた事でも知られる。プロメテの子は、そんな彼の遺伝子が使われているのだ。
     だから、ある意味で彼は、プロメテの子の親であるともいえる。
     ゆえに、彼は死にゆく憐を見捨てることは出来なかった。
     彼は、開発中断が言い渡された特効薬「ラファエル」を完成させたのである。
     注文したケーキとコーヒーが運ばれてきた。
     瑞生は、ケーキにフォークを入れながら、
    「研究が終わったら、どうする積り?」
     と、訊いた。それが一番の関心事だった。
     憐は、コーヒーを一口啜ると、
    「そうだね。そしたら、こっちに来て、何か職を見つけようと思ってるよ。まだ、あんまり考えてないんだけど」
     と言う。
    「そうなの…」
     もう少し具体的な答えを期待していた瑞生は、少しがっかりしていった。
    「こっちに来て一緒に暮らしたい」ってひとこと言ってくれれば良いのに…。
     だが、確かにそれも仕方が無いのかも知れない。
     今まで、自分には未来が無いと思っていた彼にとって、将来の事を考えるのは初めてのことなのかも知れない。
     実のところ、そういう身の上になった人間の気持ちがどんなものなのか。それは瑞生にもまだ分かっていない。恐らく、永遠に分からないだろう。
     無論、それが普通であり、幸せであることは確かだが、同時に自分には憐のことを100%理解することは出来ないのだという寂しさを感じていた。
    「ところで、最近彼はどうしてるのかな?」
     ふと、憐が言った。
    「彼?」
    「うん。孤門だよ。孤門一輝」
     孤門一輝。彼は、ナイトレイダーの隊員で、瑞生の聞いた話では、後に彼自身がデュナミストに選ばれたらしい。ダークザギに勝利したのも彼だったという話だ。
     瑞生自身が出会ったのは、忘れもしないバンピーラ事件の時だった。
     行方不明になった少女・山邑理子を探して、バンピーラの潜む山奥に分け入った時の事だった。
     今思えば、あの出逢いも偶然ではなかったような気がする。
     一方、憐が彼に出会ったのはもう少し前のことである。
     グランテラ戦の直後、いち早くジュネッスブルーの正体が憐であることを見抜いた孤門は、戦闘終了後、彼を追跡した。
     憐は、最初こそ警戒していたものの、次第に孤門を信頼するようになっていったのである。
     憐の正体を最初に知ったのも彼だった。
     彼は、憐を救うために全ての真相を暴き、仲間とともに、TLTに反旗を翻したのであった。
    「ごめん。わからない…。私、実はあれから全然会ってないんだ」
     瑞生は言った。
     憐は意外そうな顔をして、
    「あれ?瑞生はMPじゃなかった?」
     と言った。
    「ええ、そうよ。でもね、一年前のダークザギ戦以来、いろいろあって、TLTは公式の組織になったでしょ。だから、関係者の記憶を消去(イレイズ)する意義が無くなっちゃったわけ。だからMPは、前みたいに現場でナイトレイダーと接触する機会はないのよ」
    「じゃあ、ひょっとして、瑞生は今失業中?」
     心配そうに憐は言った。
     瑞生は笑って、
    「MPはちゃんと残ってるわよ。でも、そのかわり今はデスクワークばっかりよ。だから、肩が凝っちゃって…」
     と言う。しかし、瑞生は内心こうなってホッとしていた。
     瑞生は、49人の記憶を消した。
     メモレイサーがあれば、それはさほど難しい作業ではない。
     メモレイサーは携帯電話と一体化されている。
     それを起動して、マニュアル通りに設定し、スイッチを入れれば、それで終わりである。
     だが、決して愉快な仕事ではない。
     ある種の罪悪感が常に付きまとうのだ。
     無論、それが任務であり、重要な作業であることは瑞生自身も理解していた。だが、それでも、瑞生の胸の痛みが消えることは無かった。
     中でも在任中、もっとも彼女を苦しめたのが、他ならぬ山邑理子に関する一連の事件であった事はいうまでも無い。
     山邑理子は、どこにでも居る普通の少女だった。恐らく、あの偶然の出逢いさえなかったら、彼女もまたごくごく普通の生き方を出来たかも知れない。
     しかし、運命の悪戯は残酷すぎた。
     彼女は、家族と動物園に行った折、偶然孤門一輝と遭遇したばかりに、闇の巨人ダークメフィストに目を付けられてしまった。
     その帰り道、彼女たち家族は、おぞましいスペースビースト「ノスフェル」の襲撃に遭い、理子とその兄を残して全滅。その後、彼女はノスフェルの人質となり、皮肉なことに、孤門の撃ったメガキャノンバニッシャーによって、重傷を負うこととなる。
     しかし、運命はどこまでも残酷だった。
     その後、瑞生は理子とその兄に記憶処理を施した。いつもどおりに。
     それで全てが白紙に戻る筈だった。
     しかし、その結果は瑞生を生涯にわたって苦しめるものとなった。
     兄のほうは成功したものの、その妹・理子は、事件以前の全ての記憶を失い、事件に関するおぞましい記憶だけが残るという最悪の結果になった。
     今をもって尚、その原因は分かっていない。
     しかし、自分の過去に関する一切の記憶が無いという事実と、両親をビーストによって奪われたというおぞましい記憶が、彼女を二重に苦しめた事は言うまでもない。或いは今も苦しんでいるかも知れない。
     瑞生は、バンピーラ事件の折、そんな理子と偶然にも再会した。しかも、またもやビースト事件に関連して、である。
     瑞生は、メモレイサーを理子に使うことを躊躇した。
     前は、事件以外の全ての記憶を失ったが、次は本当に全てを失う恐れがあったからだ。
     この時は、瑞生が懸命に理子をビーストに遭遇させまいとした甲斐あって、幸い記憶処理をすることは無かった。
     それでも、山邑理子に関する一件が、瑞生にとって大きなトラウマになった事は、否めない。
     今でも、ふっとあの少女の顔が浮かんでくることがある。
     あの子は今頃どうしているのかしら…?
     瑞生がイレイズ対象者の人数と名前を全て記憶しているのも、そういった事への、彼女なりの一応の決着の付け方だったのかも知れない。
    「なんだ。安心したよ」
     そう言って、コーヒーを口に運びながら、憐はふと、瑞生の左手に目を留めた。
    「どうしたの?その傷?」
     見ると、中指に切り傷があった。
    「ああ、これ?これね、この前久しぶりに料理をしてたら切っちゃって…。普段からやってないと駄目ね」
     と瑞生は笑った。
    「大丈夫?」
    「うん。こんなのしょっちゅうだし…」
     瑞生は、つい微笑んだ。
     思い出すわ…。
     一年前、まだ現場に出ていた頃、ドジな私はよく怪我をした。そんな時、憐は私のことをとっても心配してくれた。
     バグバズン・ブルードに突き飛ばされて怪我をした時なんか、
    「あいつ、瑞生に怪我をさせた。絶対ぶん殴ってやる」
     だって。ほんの擦り傷だったのにね。
     でも、そんなあなたの不器用な優しさがとっても好きなのよ。
    「瑞生、料理するんだね…」
    「あら。何よその言い方。私が料理するのがそんなに意外?」
    「いや。別にそうじゃないけどさ…。だって俺、MPの瑞生しか知らないじゃん」
    「確かにそうね…」
     考えてみれば、まだ一度も憐に手料理を食べてもらった事なかったっけ…。
     入院中は飲食物持ち込み禁止だったし、それ以前はMPの仕事が忙しくて、手料理なんか作ってる暇は無かったし…。
     
     実際、手料理(らしきもの)を始めたのはMPが事務職になってからのことである。
     彼女の実家は古い武家なので、料理はもちろん少女時代にみっちり仕込まれてはいたが、やはりブランクが長いとカンを取り戻すまでには時間が掛かるらしい。
     指を切ったり、鍋を焦がすことはしばしばだった。
    「じゃあ、今度会う時にご馳走してあげる」
     瑞生は言った。
    「本当?嬉しいなあ」
     少年のような曇りの無い笑みを浮かべて、憐は喜んだ。
    「憐はどんなのが好きなの?」
    「お寿司!」
    「ええ?!」
    「は、は、は。冗談冗談。瑞生が作るものなら何でも食べるよ」
    「あ~、びっくりした…」
     まったく…。帰ったら、早速料理の勉強だわ。
    「今日は、この後どうするの?」
     瑞生は訊いた。
    「そうだね。今日の最終便で帰らなくちゃいけないからね…」
    「え?泊まれないの?」
    「うん。一応研究の責任者だからね。何日もあけられないんだ」
    「ごめんなさい、私…。何か無理させちゃって…」
    「いや。良いんだよ。俺の方こそ、平日のこんな時間に会いたいなんて言っちゃって…」
     瑞生は、上司に特別の許可を貰って、二時間だけ仕事を抜けさせて貰っていた。
    「で、最終便って何時に出るの?」
    「ええと…、確か6時ごろだったはず…」
    「え!じゃあ、もうあんまり時間ないじゃない」
     現在三時半過ぎ。
     道路や鉄道の状況にもよるが、少なくとも羽田までは一時間以上掛かる。
     搭乗手続き諸々に掛かる時間を考慮に入れれば、今出てもギリギリと言ったところか。
    「うん。そうだね」
    「どうして、そんな大事な事を先に言わないのよ?」
    「ゴメン。忘れてた」
     どうやら、ドジという点では、この人は私にも引けを取らないのかも知れないわね。
     
     支払いを済ませると、二人は慌てて、店を出た。
     瑞生は携帯でタクシーを呼んだ。すると、憐は彼女の携帯を見て、
    「あっ。瑞生まだそれを持っててくれたんだ!」
     と、嬉しそうに言った。
     見ると、彼の言う「それ」とは、イルカのストラップの事だった。
     これは一年前、憐が瑞生にプレゼントしたものだった。
     ピンク色の玉をイルカが抱いているデザインである。
    「そりゃ、捨てられないわよ。二人の思い出だもん」
     瑞生は言った。
    「憐がくれた最初のプレゼントだもん」
     少女のように目をきらきらさせて彼女はストラップを見た。
     これを見るたびに思い出す。
     私が憐と初めて会ったあの日の事を…。
    「憐。私、仕事の途中だから、空港まで見送りにいけないんだけど…」
     瑞生は申し訳なさ言そうにった。
     すると、憐は笑って、
    「良いんだよ。どうせ、また会えるんだから」
     と、言った。
     そんな事を言っているうちに、向こうの方にタクシーが見えた。
    「ねえ、憐。覚えてる?あの時…。イズマエルを倒した後、救急車に乗せられる前のこと」
     瑞生は唐突に訊いた。
    「あのときは、意識が朦朧としてたからな…。Vサインをしたのは覚えてるけど…」
    「その他は?」
    「そうだね…。確か、とってもあったかくて、軟らかい何かを感じたような…」
    「それが何だったか、分かる?」
     悪戯っぽく微笑んで、瑞生が言った。
    「さあ…?」
    「それを、もう一度感じてみない?」
    「え…」
     すると、瑞生は憐の唇に自分の唇を重ねた。
     憐は戸惑っていた。
     高鳴る鼓動が聞こえてくるようだった。それは瑞生自身も同じだったが。
     
     瑞生が唇を離すと、憐は、
    「そうか…。そうだったんだ…」
     と言った。
     そうしているうちに、タクシーが止まった。
     ドアが開いて、乗り込む間際に憐は、
    「瑞生。研究が一段落したら、必ず戻るよ。そしたら…」
    「……」
    「一緒に暮らしても、良いかな?」
     と、言った。
     ドアが閉まった。
     憐は、窓を開けて、
    「じゃ」
     と、小さく手を振った。
     瑞生は言葉が出てこなかった。ただ呆然と立ち尽くしていた。
     タクシーが走り出す。
     そして、それが10mほど進んだところで、瑞生はやっと我にかえった。
    「レーン!きっと一緒に暮らそうね。約束よーー!」
     と、瑞生は叫んだ。
     
     聞こえなかったかな?
     ―いいえ!
     見える、見えるわ!憐が…、憐がVサインをしてる。
     あの日と同じように…。
     紅潮した瑞生の頬を、一筋の涙が静かに流れ落ちた。